LOTUS 59B レストア風景

1994年、アメリカ・アリゾナ州フェニックスのガレージで
発掘されたロータス59Bフォード。           
カウルなどFRPパーツは失われていたが、重要なパー
ツはすべて揃っていて、シャシーナンバーもきちんと読
み取れ、LC59FB50と記してあった。          
 当時、ロータスワークスカーとしてワークスドライバーの
ジョン・マイルズ、のちに最年少でF−1ワールドチャン
ピオンとなったエマーソン・フィッティパルディが駆って
4勝をあげたマシンと推測される。            
その後にこのシャシーはアメリカへ渡り、フォーミュラーB
というカテゴリーで活躍した事までわかっている。    
 今回発掘された時にはエンジンもなく、ミッションはヒュー
ランドMk5というF3用のものがついていたことから入門
用として使用されていたのかもしれない。        
レストアにあたって、アメリカの業者はミッションはこの
まま、エンジンはロータスツインカムを載せて・・・という話
であったが、どうせレースで使用するうちにパワーが
欲しくなると思い、ミッションを当時最強のヒューランドFT
200に変え、エンジンは日本にたまたま在庫していた
フォードFVCを譲っていただくことに決めた。      
シャシーはところどころ腐っていたところもあり、FVCエンジ
ンを換装するのであれば補強も必要ということでパイプフレ
ームごとレストアを行なうことになった。シャシー用の馬に載
せ水平を出してから新たに制作されるパイプフレームを補
強しながら溶接していく。                    
すべての塗装を剥がし、ゆがんだところを外した後に新た
に制作し溶接するという作業は言葉であらわすと簡単であ
るが、気の遠くなるような地道な作業の繰り返しである。  
すべての面に対して水平、平行を出して溶接しおわった時
点でもう一度、専用の馬に載せて確認をする。       
これはシャシーをリアから写した写真であるが、補強もかな
りの数になっているのがよくわかる。             
 ロールバーの頂点から伸びている斜めのバーはリアのエ
ンジンを載せるところには上部に補強をいれることができな
いのでゆがみを少なくするためにはいる補強バーである。
 ただし、エンジンをおろす時には邪魔になるので溶接を
することはできないのでピンで止めている。         
シャシーのレストアの合間には小部品のレストアも平行して
行われる。どのパーツも錆が出ているのでサンドブラスター
で錆を落とし、奇麗に研磨された後に塗装、もしくはメッキ
する。                               
 この時にはX線でマグネシウム合金のパーツにクラックが
入っていないかもチェックするが、見落としてしまうこともある
らしい。これは後でひどい目にあうことになる。        
 足回りの部品も装着し、ゆがみがないかをもう一度チェック
する。ゆがみがあれば必然的にすべてのパーツを付ける時
に無理が生じてきちんと取りつけられないか、可動パーツの
作動がスムーズに行かないという不具合でわかる。     
 この時はまだシャシーも金属色のままでチェックする。  
 このチェックの時点で問題なければもう一度パーツをす
べてはずしてシャシーの塗装にはいる。          
 シャシーの塗装が終了してから別にレストアの終了してい
たパーツを組み込む。この写真はフロント部分のパーツを
組み込んだところである。                    
 この時代、ラジエター(冷却装置)はフロントに位置し、冷
却水はシャシーの横を通ってリアに運ばれるようになってい
るが、熱水が内部を通るのでシャシー内部にパイプを通す
とドライバーにやけどを負わせる恐れがある。そこでシャシ
ーの外側をはわせている。                   
フロントラジエター後ろの空間にはブレーキとクラッチのマス
ターシリンダーが配置されている。そしてその上にはステアリ
ングラックが通り、その上にはスタビライザーが通っている。
 この部分の剛性が足りないと操縦性に影響があるために強
固に作ってある。                         
 また、シャシー内部のドライバーシートとリアに位置するエン
ジンの間には燃料タンクが配置されている。レース中、燃料
が減ってきて重量が変わっても影響を受けないようにホイー
ルベース(前と後の車輪の間)の中心に位置するのがドライ
バーと燃料タンクである。                    
 燃料タンクの前にあるリングはホイールを止めるホイール
ナットである。フォーミュラーカーはセンターロックといって
一本のナットでホイールが止まっている。           
 完成しつつあるシャシーにFRP製のカウル下部ををフィッ
ティングしてみる。一体式になっているので整備性は悪いが
レース中にはずれることがない。
 このシャシーにFRP製の上部カウルを装着、カラーリングは
当時のロータスワークスカラーであり、メインスポンサーであっ
たゴールドリーフカラーにするためにカウル上部のFRPは最
初から赤く染めてある樹脂を使用している。          
 ステアリングホイールは当時のままのオリジナルが装着され
ているが、コクピットの狭いフォーミュラーカーでは乗り降りが
しにくいのでクイックチェンジ(脱着式)のっステアリングホイー
ルに交換する予定だったが、とりあえずステアリング、シフトレ
バーを動かしてみて手がカウルにあたってしまう部分をチェッ
クする。
 レストアが完了し、アメリカから空輸されて来た状態のロータ
ス59B。エンジンは日本で換装するので載せられていないが
ミッションはヒューランドFT200が手に入ったので装着されて
きている。これ以降の作業は日本で行なわれることになる。 
 エンジン、マニフォールド、それに伴う補記類はエンジンが
完成してから現物合わせで制作することになる。       
 この時点でレストア開始から3年が経過している。      
 
 コクピット内部、ステアリングホイールはまだオリジナルのまま
である。                                
 リアから見るとギアボックス周辺の補記類は載せてある。ギア
ボックスの横にみえるシルバーのタンクはオイルタンク。    
 タイヤはアメリカからGOODYEAR EAGLEが取りつけられて
きた。F1でおなじみのあのタイヤである。ただし、SCCJ(スポー
ツカー・クラブ・オブ・ジャパン)主催のレースではもっとグリップ
のいいEVONを使用するのでこのタイヤはレインタイヤとしてス
トックする。                               
 リアウイングも未塗装ながら取りつけられてきたが、高さ、位置
など調整が必要なのでウイングステーは再制作することにした。
 オリジナルのままのゴールドリーフステッカー。当時(1968年〜
)のロータスのメインスポンサーである。

上の3枚の画像はマヨネーズメーカー、キューピーのTVCMの一場面。
               
たまたま撮影に使いたいマシンを探していたCM担当者が工場に来た時
に僕の59Bが成田から運ばれてきたところで、それを見たCM担当者から
ピカピカに仕上がっていたこのマシンを見て撮影に使用したいという申し
出があり、どうせエンジンまわりができるまで走行させることができないので
それまでちょっと小銭を稼いでもらおうかなと思いOKした(笑)。     
 だから、この撮影の時点ではエンジンなどは完成していなかったのでダ
ミーエンジンを載せて撮影した。                        

 こうしてすべての作業が終了して走れるようになったのは1997年11月2日のことであった。